羅臼で発見!クロツチクジラ観察会を実施しました。

2020年2月6日

2012年に、羅臼町内の海岸に死体として打ち上げられた一頭のクジラがいました。
漂着後にクジラの死体は回収・解体され、多くの調査と研究を経て、2019年に新種「クロツチクジラ」として発表されました。
新種として発表されるまでには、多くの漁業者や研究者の方々の協力と努力があります。

2月2日(日)に実施した観察会「羅臼で発見!クロツチクジラ観察会」(主催:環境省羅臼自然保護官事務所 運営:知床財団)では、羅臼町内でクロツチクジラの漂着死体を最初に発見した漁業者の方から伺ったお話や、クロツチクジラの特徴、新種として発表される上で重要となった”ストランディングネットワーク北海道”の活動を、ご紹介させていただきました。

ストランディングとは、イルカやクジラの座礁・漂着・混獲・河川港湾への迷入など、通常の生息状態ではない状態にある事をストランディングといいます。

“ストランディングネットワーク北海道”は、北海道沿岸で発生したストランディングの情報収集と標本採取等の調査を行う研究グループであり、学術目的で標本の収集や死亡個体の回収を行い、無償・無条件で希望する研究機関に標本を譲渡しており、2007年の創立から現在までに600件以上のストランディング情報を収集されています。

2012年に羅臼町内でのクロツチクジラのストランディングを発見した漁業者の桜井憲二さんは、ストランディングネットワーク北海道の存在を知っていた為、漂着死体を研究者の方々に引き渡すことができました。もし漂着死体が研究者に引き渡されていなければ…ゴミとして処分され、クロツチクジラの調査・研究が遅れ、新種として発表されるのは、もっと後になっていたかもしれません。

2012年に羅臼町内に死体として漂着したクロツチクジラ[写真提供:桜井憲二氏]

羅臼町内にはクロツチクジラの他にも、多くの海生哺乳類のストランディングがあります。
生存し再び海に帰る鯨類もいれば、流氷に閉じ込められて骨格標本となる鯨類もいます。

2005年に羅臼町内に座礁・流氷に閉じ込められたシャチの群れのうち1頭は・・・↓
羅臼ビジターセンター館内に骨格標本として展示されています。

何らかの理由で命を落とし、漂着死体となっても、調査・研究・標本に活用する事で、生態の解明や、新種発見に繋がります。また、多くの人々に海の環境や海の生物を知ってもらう事に繋がります。
もし、北海道内でストランディングを発見した場合は、下記へご連絡ください。

羅臼ビジターセンターでストランディングネットワーク北海道のパンフレットも配布していますので、是非お持ち帰りください。

今回の観察会のお楽しみは、旧羅臼町郷土資料館館長の涌坂周一さんが原型を作成したクロツチクジラの頭部を模した文鎮に色を塗る作業です。

涌坂さんが作成した原型からシリコン型を作り、参加者数分の文鎮を作成しました。

既知種であるツチクジラと比較すると、クロツチクジラは胴体の長さに対してクチバシが短めであり、体色は黒いのが特徴です。
その他、オスがメスをめぐって争う際に付く背中の傷が目立つ事、クチバシの先端は白色であるなど、文鎮に彩色することでクロツチクジラの色々な(彩色だけに)特徴を学ぶことができました。

完成したクロツチクジラの文鎮。

羅臼ビジターセンターでは、 2020年も様々な観察会を企画・準備しております。 是非ご参加ください!

知床財団・上村